Easy come, easy go.

中間テストで大躍進を果たしたN君の話。

中1の9月に入塾した。成績は学年で半分よりやや後ろくらい。運動部に所属しているので、週二日のプランから始めた。

生まれつきなのか、のんびり屋でおよそ「焦る」という姿をみたことがない。普段の授業中もそうだが、テスト対策中でさえ「間に合わせ」の勉強をしない。我々としてはテストまで時間がないので、せめて「ここまでは」という気持ちがあるのでもうちょっと焦ってもいいのでは、と思うこともあった。

しかし、彼はそんなことは全く意に介さずマイペースを崩さない。時間はかかるがやるべきことは最後までキチッと仕上げる。それを淡々とこなす。

部活帰りに直接来るので、親が弁当を届けてくれる。それもあわてて掻き込むのではなく、ゆっくり味わってでもいるかのように残さずに食べる。しかもデザートも必ず一品ついてくる。そこにも親の愛情が伝わってきて、感心させられる。

授業が終わって、迎えを待つ間も学校の宿題を淡々とこなす。

 

成績も確実に上がってきて、本人も自信がついたのか毎日楽しそうに登塾する。その姿にこちらはさらに楽しくなる。

 

中間テスト対策中、私が「成績は急には上がらないかもしれないけど、基礎から確実に積み上げていけば必ず上がる」というようなことを話していたら、彼がふとこんなことを言った。

彼は三味線も習っていて、そのお師匠さんがよくこんなことを言うよと。「早く覚えたものは、早く忘れる。」正確には覚えていないが、そのような内容だった。

英語のことわざにある「Easy come, easy go.」(「得やすいものは失いやすい」「悪銭身につかず」)。そういうことだろう。

 

なるほど、彼の中にはそういう考えが基本的にあるのだろう。三味線の先生のおかげもあるだろうが、私は家庭教育の過程でそういう子どもに育ったのだろうと思っている。なんて素晴らしいのだろう。弁当の件といい、彼の日頃の所作といい、そして私の言葉への反応の仕方。お母さんにはお会いしたことがあるが、お父さんにはまだお会いしたことがない。しかしいい意味で「親の顔がみてみたい」と思わせる子どもだ。そして彼の口から時々、おばあちゃんの話も出る。彼がいかに愛されているかが伝わってくる。

 

中間テストでは自己最高の得点をとった。かなりいい席次を取れる思ったが、一学期の中間テストは総体的に高得点なので、彼の中での予想ほど上がらなかったようだ。しかし、自己ベストの席次ではある。こちらももっと上がると思ったので残念だなと一瞬思ったが、「Easy come, easy go.」だと思えば、今後の楽しみが増えたことになる。

今のように続けていけば、まだまだ伸びる。伸びしろ十分なN君である。